八百板 洋子 編・訳 ルディ・スコチル 画 福音館書店
ブルガリア、ルーマニア、セルビア、トルコ、ギリシアなどのバルカン半島の周辺の国々の昔話を集めた本です。
ルーマニアの、「青い炎の館 トランシルヴァニアの伝説」という昔話が載っています。トランシルヴァニア地方の険しい山道で、事故にあった一人の娘が、立派な館の人たちに助けられます。館に住んでいる伯爵は、娘に自分の息子のお嫁さんになってもらえないだろうか、と言います。娘も、その若者を一目で好きになっていました。けれども、次の日、娘はここが吸血鬼たちの館だということを知ってしまうのです。吸血鬼たちに襲われそうになる娘を、若者は最後まで守り抜くのでした。
ギリシアの、「ゴルゴナの育てられた若者」も好きなお話です。昔、あるところに子供に恵まれない漁師の夫婦がいました。その様子を見た海の神のゴルゴナ(魚のしっぽを持った女性の姿をしている)が、その子が十二歳になったら自分のもとに返すことを条件に、漁師の夫婦に子どもを授けてやりました。その男の子は輝くような美しい少年になりました。男の子が十二歳になった時、ゴルゴナが現れて男の子を海の底にさらっていってしまいました。ゴルゴナは、男の子に生きていくあらゆる力を与え、地上に返してやりました。やがて、その若者は、その国の美しいお姫様を、お嫁にもらおうと思い、お城へ出かけました…
ロマンチックなお話も、素朴なお話もあって、たっぷりと楽しめます。

