ムギと王さま 本の小べや 1

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ファージョン作 石井桃子訳 岩波書店文庫

 「現代のアンデルセン」とも呼ばれた、エリナー・ファージョンという作家の短編集です。14編のお話が入っていて、どれも、やさしい世界が、ていねいな語り口で描き出されています。

 「小さな仕立屋さん」というお話が入っています。大きな仕立屋さんに奉公する、小さな仕立屋さんのロタは、とても腕の良い仕立て屋でした。けれども、ロタは、自分の腕が良いなんて一度も考えたことはありませんでした。しかられても、いつも機嫌よくそれを受けて、つつましく仕事にいそしんでいました。ある時、隣の国の若い王様が、舞踏会を催すことになりました。その舞踏会で、お妃さまをお選びになるということです。ロタは、その舞踏会に行く三人の令嬢のドレスを作ることになるのですが…

この、「小さな仕立屋さん」のロタのような、つつましくて、やさしい語り口で、ほかのお話も語られます。何度も読んでいると、心が落ち着いてきます。淡い色彩で、繊細に描かれる絵のような世界です。

  

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