エリナー・ファージョン 作 石井桃子 訳 岩波書店
「シンデレラ」の昔話を、作者が劇のための脚本にしました。その脚本を、また物語の形にしたものがこの「ガラスのくつ」です。
この本は296ページある、厚めの本になっています。シンデレラ(この本ではエラという名前になっています。)が、地下のお勝手の中にあるベッドで起きだすところから物語が始まります。エラが家具たちとお話をする場面や、名付け親の妖精とのやり取りなどの会話も読むことができます。
シンデレラが継母に、雪の中へ薪を取りに行かされる場面は、元の昔話にはないと思いますが、とても美しい章だと思います。シンデレラは真っ白な雪の中で、不思議な出来事に出会うのです。シンデレラはおなかがすいていたのですが、森の中で助けたおばあさんから4つの立派なモモと、鶏肉の詰まったパイをもらうのです。
他にも、元の昔話にはないと思われる場面が追加されています。シンデレラと王子様が舞踏会を抜け出して、二人きりで話をする場面などもあります。この物語の季節は冬だと思いますが、全体的に、雪が白く積もって、きらきら輝いているような雰囲気が感じられます。
「シンデレラ」の劇を見ているようにも楽しめ、また、作者流にふくらませた「シンデレラ」を読むという風にも楽しめると思います。

