フェリクス・ホフマン 編・画 大塚 勇三 訳 福音館書店
この巻で、この福音館書店の「グリムの昔話」は最後です。3つの巻を合わせると、かなりたくさんのお話が入っていて、とても読みごたえがあると思います。
この本には、「いばら姫」「青いランプ」「踊ってぼろぼろになった靴」「泉のそばのガチョウ番の女」「マレーン姫」「金の鍵」などが収められています。1巻や2巻と変わらず素敵な挿絵もついています。
「マレーン姫」というお話を紹介したいと思います。昔、ある勢力のある国の王様に、マレーン姫というお姫様がいました。マレーン姫には、結婚を申し込んでくれた心の底から愛し合っている王子様がいました。けれども、お父様の王様は、マレーン姫を他の人に嫁がせるつもりでした。マレーン姫がそれを断ると、王様は怒ってマレーン姫を、侍女と二人で日の光も月の光も差し込まない、真っ暗な塔に閉じ込めてしまいました。7年たったら、マレーン姫の強情な心がなおったかどうか見るというのです。
七年が過ぎました。いくら待っても助けが来ないので、姫と侍女が交代で塔の石の周りの漆喰をつっつき、石を一つ一つ外してやっと外に出ることができました。けれども、マレーン姫のお父様の国は滅ぼされてしまっていたのでした。
マレーン姫はさすらい歩いて、別の国へたどり着きました。その国は、前に姫に結婚を申し込んでくれた、姫が愛しているあの王子様の国だったのです。マレーン姫は、その王子様のご殿で、台所の下働きをすることになりました。王子様は、マレーン姫に気が付いてくれるのでしょうか。
この後のお話で繰り返される、王子様とマレーン姫やり取りや、マレーン姫がつぶやく文句が味わい深いです。
このほかのお話も、深みのある、美しい、味わい深いものばかりです。また、どことなく神秘的な感じがします。魔法のような雰囲気を感じられる、この昔話集はとてもおすすめです。