ラム 作 厨川圭子 訳 偕成社
シェイクスピア物語[上]の続きの巻です。この二巻で完結です。この本に入っているのは、「終わりよければ みなよろし」「じゃじゃ馬ならし」「まちがいつづき」「しっぺいがえし」「十二夜」「アテネのタイモン」「ローミオーとジューリエット」「ハムレット」「オセロー」「ペリクリーズ」の十編です。
どのお話も好きですが、今回は「ペリクリーズ」を紹介したいと思います。
今のレバノン南西部の町タイアの領主、ペリクリーズ公は、亡命のためたどり着いた国で、その国の美しいセーイサ姫のために開かれた馬上試合で見事優勝します。ペリクリーズ公とセーイサ姫は結婚しました。命を狙われる危険がなくなったので、ペリクリーズ公はタイアに戻ることになりました。セーイサ姫は妊娠していたので、ペリクリーズ公は危険な船旅をさせたくなかったのですが、セーイサ姫がしきりに望むので、二人はタイアへ向かう船に乗り込みました。
ところが、大嵐が起こり、恐怖のあまり具合が悪くなったセーイサ姫は、赤子を産み落とすとすぐに亡くなってしまうのでした。ペリクリーズ公は悲しみ、セーイサ姫をマホガニーの木で作った棺に入れ、良い香りの香料や宝石、それからセーイサ姫の身分を書き付けた紙と一緒に海に埋葬しました。
生まれた姫は、海で生まれたのでマリーナと名付けられました。ペリクリーズ公は、小さな姫はタイアに着くまで耐えられないかもしれないと、マリーナ姫をトルコ南部の都市、タルサスの総督に預け、王女にふさわしい教養を身に着けてもらうことにしました。しかし、総督の妻は美しく、賢く、気品のある娘に成長したマリーナ姫を妬むようになり、マリーナ姫を殺そうと図るのでした…
「ペリクリーズ」の劇を見たことはありませんが、この本からは、海やその近くの町を舞台にしているからか、なんだか開放的な、夏らしい感じが伝わってきます。主人公たちには幾度も困難が降りかかってきますが、最後はハッピーエンドです。この物語からは自然と青の色が連想されます。
他では、「じゃじゃ馬ならし」「ローミオーとジューリエット」「オセロー」が特に好きな物語です。文庫本で手軽にシェイクスピアの世界を楽しめる二冊です。

