グリパリ作 金川光夫訳 岩波書店
パリのブロカ通りに、ピエールさんというおじさんがやってきました。ピエールさんは、毎週木曜日にはブロカ通りの子どもたちを集めて、お話会を開きます。ブロカ通りに住んでいる人々を登場人物にしたり、昔からある物語をもとにして作ったお話を集めたのが、この本です。
私が好きなのは、「蛇口の妖精」というお話です。フランスがキリスト教化され、ある泉には十字架が立てられました。そこに昔からいる妖精は、外に出られなくなってしまいました。時代は過ぎて、泉の水は水道に引かれました。妖精は、水道を通って娘が二人いる一家の住んでいるアパルトマンの一室にたどり着きます。
気立てのいい娘が恩恵にあずかり、意地悪な娘が罰せられるという昔話を少しひねった物語になっています。
他にはおとぎの国の世界が現代のブロカ通りの生活に入り込んでくるような話が多く収められています。まえがきで紹介されている、ブロカ通りの住人たちがお話の中に出てくるので、探してみてください。