八百板 洋子 編・訳 高森 登志夫 画 福音館書店
ブルガリアのソフィアに留学していた編者による、ブルガリアの昔話集です。私は、編者の八百板洋子さんが、ブルガリアへ留学していたことを書いた、「ソフィアの白いばら」(八百板洋子作 福音館書店)が、とても好きで何度も読んでいました。もともと外国の昔話を読むことも好きだったので、この本を見つけた時はとてもうれしかったです。
題にもなっている「吸血鬼の花よめ」は、このようなお話です。
昔あるところに、うっそうとした、深い木立に囲まれた、古いお城がありました。そこには年老いた王様と、三人のお姫様が住んでいました。一番愛らしい、一番下のお姫様は、舞踏会で出会った黒い帽子をかぶった若者と結婚の約束をしました。二人のお姉さんはもうお婿様が迎えに来たのに、その若者はなかなか使いの者をよこしません。姫のもとに若者の使いがやってきたのは、ある風の強い晩でした。新しい住まいは、古ぼけた大きな墓の中でした。姫は、毎晩、夕食のパンを一口食べただけで急に眠くなり、眠ってしまうので、自分の夫となった若者の姿を、まだ一度も見たことがなかったのです…
暗くて恐ろしいような舞台の描写ですが、お話全体を読んでみると、とてもやさしく美しい、ロマンチックな感じを受けます。お姫様と若者は、最後には幸せになるハッピーエンドです。
他のお話は、「石灰娘」「スモモ売り」「月になった金の娘」などがあります。魔法昔話も、そうでないものも、ていねいに語られ、「吸血鬼の花よめ」と同じように、何か幻想的な雰囲気を感じられます。