フェリクス・ホフマン 編・画 大塚 勇三 訳 福音館書店
前に紹介したものとは別の出版社から出ているグリムの昔話です。フェリクス・ホフマンという画家の格調高い挿絵がついています。この第一巻には「ラプンツェル」「カエルの王さまーまたは鉄のハインリヒ」「謎」など35編が入収められています。
この本には「七羽のカラス」というお話が入っています。昔、ある男の人が、息子を七人持っていました。女の子がやっとおかみさんに生まれ、お父さんは息子たちに洗礼の水を汲みに行かせました。ところが、男の子たちは水を汲むかめを井戸に落としてしまって、どうしたらいいか分からず、家に帰れずにいました。息子たちがなかなか戻ってこないので、お父さんはいらいらして、「あんな子たち、みんなカラスになっちまえ!」とさけんでしまいました。すると、七人の息子たちは真っ黒なカラスになって、空高く飛んで行ってしまったのでした。
末の女の子は、日に日に美しく育っていきました。両親が兄たちのことを話さないようにしていたので、女の子は、自分に七人の兄さんたちがいたことを知りませんでしたが、ある時、そのことをよその人たちがうわさしているのを聞きました。両親にそのことを確かめると、女の子はどうにもじっとしていられなくなって、七人の兄さんたちを探す旅に出ることになりました。女の子は、太陽や月、星たちのところを訪ね歩いて、ようやく兄さんたちに会うことができたのでした。
独特の神秘的な雰囲気や気品ある登場人物たちの様子も感じられるシリーズだと思います。いつも自分のそばにおいて、楽しみたい文庫本です。