カルヴィーノ編 大久保昭男訳 偕成社
イタロ・カルヴィーノがまとめた「イタリア民話集」から、10編のお話がこの本に収められています。
挿絵が、この本に収められている昔話の雰囲気をよく表していると思います。あまり素朴というわけではなく、繊細で、色とりどりで、上品にきらきらと光っているようなお話ばかりです。
「悪魔にもらったズボン」というお話があります。悪魔から、つかみだしても、つかみだしても、いくらでも金貨が出てくるズボンをもらった代わりに、7年間体を洗ってはいけないし、髪の毛や爪を切ってもいけないという約束をした美しいサンドリーノという若者の物語です。汚い姿のまま、結婚の約束をしたサンドリーノですが、婚約者の娘に送った花嫁支度は、素敵なものばかりです。「ふわりとはおることができるほどかるい肌着には、ひざのところまで、ししゅうがしてあります。フランドル産のリネンで仕立てられたペチコート、鼻をかむところもないほどレースでかざられたハンカチ、さまざまな色の絹のドレス、宝石でかざられた、金と銀のにしき。赤やみどりのビロードの服。」
ただでさえ素敵な昔話の世界が、このような描写で、さらに美しくなっているような気がします。
他のお話も、つやつやしたリンゴの中に美しい娘が入っているという「リンゴむすめ」や、お姫様と太陽との間に生まれた「太陽のむすめ」のお話など、きれいで面白いものばかりです。