プー横町にたった家

倉庫

A・A・ミルン 作 石井桃子 訳 岩波書店

 前回紹介した「クマのプーさん」の続編です。プーさんたちが住んでいる百町森に、トラーという、はねっかえりの動物がやってきます。トラーも加わって、プーさんたちのお話が続いていきます。

 私が好きなのは、「トラーが森にやってきて、朝ごはんをたべるお話」です。トラーは体が大きい、はねっかえりの動物なのですが、まだまだ面倒を見てやらなくてはならない子どもです。トラーは夜中にプーさんの家にやってきました。朝になり、プーさんはハチミツで朝ごはんにしました。トラーも食べようとしたのですが、トラーはハチミツが好きではないことがわかりました。

 プーさんは、トラーと一緒に、トラーの好きな朝ごはんはないかと探しに行きます。コブタの好きなドングリや、イーヨーの好きなアザミを試してみましたが、どれも、トラーは好きではありませんでした。クリストファー・ロビンに聞いてみると、トラーの好きなものは、「トラーがじぶんで知ってるんだと思ってたよ。」と言います。最後に、みんなでカンガルーの親子のカンガとルーの家に行くのですが、そこでトラーはようやく自分の好きな食べ物を見つけることができるのです。

 自分の好きなものがなかなか見つからないと、焦ってしまいそうですが、このお話に出てくるみんなはとてものんびりしています。プーさんは朝ごはんが見つからないことを詩にしてみたりもします。

 登場人物たちが、他の者たちと話していて、心に感じる違和感などもこの本には描かれています。けれども、そんな摩擦も、この本の文章はとてもやさしく受け止めている感じがします。のんびり構えていることによって、そんな摩擦を乗り越えられているような気がします。

 心がざわざわするときなどに、このプーさんの2冊の本の文章を味わうことによって、その波立つものを受け止めてもらうことができると思います。

 

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